Papers and Abstracts

論文・講演抄録

O-16 保温性能が向上した新規精液輸送容器トランスポーターS-2の基礎的・臨床的検討

学術集会 一般演題(口頭発表)

2022年度 学術集会 一般演題(口頭発表)

発表者:川野 広大1)・岡田 弘2)・3)・岩端 威之2)・5)・上村 慶一郎4)・伊木 朱有美1)・鍋田 基生1)・杉本 公平2)

1) つばきウイメンズクリニック
2) 獨協医科大学埼玉医療センター国際リプロダクションセンター
3) 株式会社みらい生命研究所
4) 久留米大学医学部泌尿器科
5) 獨協医科大学埼玉医療センター泌尿器科

Abstract

【目的】
ART 施設において人工授精や体外受精に用いられる精子は,自
宅で採精したものを患者自ら持ち込むことも多い.院内採精であれば精子の運動率に異常がなかった症例でも,自宅採精の場合は施設に搬入するまでに時間を要するため,外気温に左右され運動率の低下が起こることがある.温度変化による精子への影響を避けるため,長時間の輸送に適した保温効果のある採精容器の必要性が高まっている.今回,従来のトランスポーターS(TPS)を改良し保温性能が向上したトランスポーターS-2(TPS-2)を開発したので,その基礎的性能と臨床現場での使用結果を報告する.
【方法】
基礎検討:妊孕性の確かめられた男性(正常対照)9例の精液を
通常の採精容器,TPS,TPS-2に入れ,10℃の冷蔵庫内で3時間
保管した際の温度変化を連続測定した.正常対照5例と男性不妊外来通院中の患者9例から得られた精液を,通常の採精容器と
TPS-2 に分注し,室温25℃で2時間静置した場合と,10℃の冷蔵
庫内で2時間保管した際の精子パラメータの変化を比較した.臨床
現場での検討:同意を得られた男性不妊外来通院中の患者30例を
対象とした.外気温が10℃以下の冬季において,通常の採精容器,TPS-2を用いて精液を1-2時間かけて搬入した際の各々の精子パラメータを測定した.
【成績】
10℃で3時間保管した場合,通常の採精容器を用いると容器内
の精液の温度は20分程で10℃付近まで低下し,TPSでは通常の
採精容器よりは温度低下が緩徐であったが2時間ほどで10℃付近ま
で低下した.しかし,TPS-2 の場合は容器内の精液の温度は非常
に緩徐に低下し,3時間後でも20.1℃であった.精液を10℃で保管
した場合,通常の採精容器とTPS-2を比較すると,正常対照の精
液の場合は精子運動率median 8%(範囲3-58)vs.63%(61-71)となり,TPS-2を使用した場合の運動率が有意に高かった(P<0.05).男性不妊患者精液の場合も同様に,精子運動率median 0%(範囲0-4)vs.3%(1-48)と,TPS-2 で有意に高い結果となった(P<0.05).いずれも精子濃度,正常形態精子率,s-DFI,ORPに有意差はなかった.外気温が10℃以下の条件で患者精液を搬入した場合,精子運動率と総運動精子数は通常の採精容器と比較してTPS-2 が有意に高値であった(P<0.001, P=0.014).
【結論】
TPS-2を用いて精液を輸送することで,冬季のような低温環境
下においても容器内の温度低下を緩やかにし,精子運動性の低下
を軽減することができると示唆された.

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