Papers and Abstracts

論文・講演抄録

O-19 精子の運動パラメーターを用いたC-IVF 高受精予測因子の探索

学術集会 一般演題(口頭発表)

2022年度 学術集会 一般演題(口頭発表)

発表者:生田 すみれ1)・辻 暖永1)・浅野 恵美子1)・福永 憲隆1)・2)・浅田 義正1)・2)

1) 浅田レディースクリニック
2) 浅田生殖医療研究所

Abstract

【目的】
ARTにおける最適な受精方法の選択はより多くの正常受精卵の
確保につながる.当院では精液処理後の運動精子濃度が1.0×106/
ml 以上の症例にはC-IVFとICSIを併用した受精操作を行っているが,ICSIと比較してC-IVFの受精率は低いのが現状である.そこで精子の運動パラメーターからC-IVFの受精率がICSIと同等以上になる因子を探索することで,より多くの正常受精卵を得ることができる.本検討では,精子の運動パラメーターからC-IVF で高受精となる予測因子を探索し,最適な受精方法選択基準を定めることを目的とした.
【方法】
2018年7月~ 2022年3月に採卵を行い,C-IVFを5個以上実施し
た30歳から35歳の322周期を対象とした.なお,精子の運動パラ
メーターの解析には精子運動解析システム(SMAS)を用いた.当
院でのICSI 正常受精率を基準とし,C-IVF 正常受精率80%以上を高受精と定義した.精液処理前後のSMASで得られた運動パラメーターを説明変数として,ロジスティック回帰分析を行いC-IVFの高受精と関係する項目を検索した.次にこれらの項目がC-IVF高受精の予測因子となり得るか後方視的に検討した.
【成績】
ロジスティック回帰分析の結果,処理前曲線性と処理前頭部振
動数においてC-IVFの高受精との関係が示唆された.これらの項
目の閾値は,処理前曲線性は0.707,処理前頭部振動数は9.026Hz
であった.これら2 つの条件を満たした場合の正常受精率は満たさない場合と比較して有意に高かった(78.2% vs. 69.1%, P<0.01).また,処理前曲線性0.707未満かつ処理前頭部振動数9.026Hz 以上の条件におけるC-IVF 正常受精率が80 %以上となる周期は68.5%,上記条件以外での高受精となる周期は48.0%であり,条件を満たすことで高受精になる割合は高くなるものの(P<0.01),条件を満たさない場合でも約半数の周期で高受精となった.比較として,ICSIにおける高受精の周期は同条件下で85.1%,それ以外では83.3%であり有意差はみられなかった.
【結論】
精子の運動パラメーターにおけるC-IVFの正常受精率と関係す
る項目として,処理前曲線性と処理前頭部振動数が候補に挙げら
れた.これらの項目が予測因子となり得るか検討したが,絞り込んだ条件以外でも高受精となる症例が半数近くみられたことから,精子の運動パラメーターから精度の高いC-IVF 高受精の予測を立てることは現状難しい.そのため精液処理時に得られる精子の運動パラメーターから全てC-IVFを実施する選択を行うよりも,Split ICSIやすべてICSIを行う選択する方が多くの正常受精卵を得られ,より早期に妊娠出産につながると考える.

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