Papers and Abstracts

論文・講演抄録

O-26 分割期での細胞質のざらつき(pit)が胚盤胞移植の妊娠率に与える影響について

学術集会 一般演題(口頭発表)

2022年度 学術集会 一般演題(口頭発表)

発表者:村形 佐知・野中 美幸・石川 智則・齊藤 和毅・岩原 由樹・中筋 貴史・小竹 涼子・宮坂 尚幸

東京医科歯科大学病院周産・女性診療科

Abstract

【目的】
現在,胚盤胞の評価はGardner 分類など形態学的に行われるこ
とが多い.しかし,グレードが良いと判断した胚盤胞でも妊娠に結び付かないことがあり,その原因を探るため分割期での状態に注目した.分割期胚では,割球の細胞質にpitと呼ばれる顆粒状のざらつきが見られることがあり,本研究では分割期でのpitの有無が胚盤胞移植の妊娠率に影響するかについて解析した.pit の出現の判断にはタイムラプスの画像を用い,タイムラプスで得られる知見が胚の選択に有効かどうかについても検討した.
【方法】
2019年10月から2021年5月までに単一融解胚盤胞移植を行った
110周期を対象に,受精後の培養時にpit が現れたかどうかをタイムラプスインキュベーターの画像を用いて,後方視的に解析した.分割期にpitが出現したものをpi(t +),出現しなかったものをpi(t -)として,臨床妊娠率を比較した.また,pi(t +)とpi(t -)における採卵時の女性の年齢の比較を行い,受精方法(cIVFまたはICSI)におけるpi(t +)の割合も比較した.統計は,フィッシャーの正確確率検定またはt 検定を用いて解析した.
【成績】
単一融解胚盤胞移植の臨床妊娠率は,pi(t -)は50.0%(12/24)であるのに対し,pi(t +)は26.7%(23/86)と有意に低下した(p<0.05).また,採卵時の女性の平均年齢は,pi(t -)は37.3歳,pi(t +)は36.2歳であり, 有意な差はなかった. 受精方法(cIVF またはICSI)におけるpi(t +)の割合は,cIVFは72.4%(42/58),ICSIでは84.6%(44/52)とICSI で高い傾向が見られたが,統計学的に有意な差はなかった.
【結論】
分割期にpit が出現した胚盤胞では,pit が出現しなかった胚盤
胞と比較して有意に妊娠率が低下した.pit の出現において,採卵
時の妻の年齢や受精方法の影響はなかった.このことから,移植
胚の選択時に分割期でのpitの出現の有無が指標の一つになりうる
可能性が示唆された.また,タイムラプスの画像からpit の出現の
判断が可能であったことから,タイムラプスで得られる知見が胚の選択に有効であると考えられた.
今後は症例数を増やして解析を進め,pitの正体および出現の原
因についても追及していきたい.

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