Papers and Abstracts

論文・講演抄録

O-27 女性年齢45歳以上の患者にARTは有効か?

学術集会 一般演題(口頭発表)

2022年度 学術集会 一般演題(口頭発表)

発表者:山田 健市・加藤 雅弘・岩佐 由紀・加茂野 倫子・若生 麻美・力丸 由佳・遠藤 茉里奈・村川 晴生

仙台ソレイユ母子クリニック

Abstract

【目的】
女性年齢45歳以上のART 有効性は乏しく,周産期管理など様々
な観点から,採卵時や胚移植時の年齢制限を設けている施設がある.しかし,当院のように45歳以上でも採卵を受け入れている施設も散見される.日本産科婦人科学会のART 症例登録システムにおいて,2020年実施成績では,採卵後の経過が示され,45歳以上での妊娠,出産報告もあるが,培養成績の報告は未だ少ない.また,近年,社会的卵子凍結需要も増加している.日本生殖医学会は,社会的卵子凍結の採卵時年齢は40歳以上では推奨しないとしているが,40歳以上でも卵子凍結を実施している施設もある.そこで,本研究は,採卵時女性年齢が45歳以上のARTは有効であるかどうか比較検討を行った.
【方法】
2019年から2022年6月の期間,当院において,採卵を実施した40歳以上の653周期を対象とした.検討1)採卵時の年を,40-42歳,43-44歳,45歳以上の三区とし,正常受精率,多前核形成率,Day3良好胚率,Day5/6胚盤胞発生率,Day5/6良好胚盤胞発生率について比較検討を行った.検討2)検討1で得られた胚から凍結融解胚移植を実施した414周期について,妊娠率,流産率の比較検討を行った.
【成績】
検討1)採卵時年齢40-42歳,43-44歳,45歳以上の正常受精率は77.4%,76.4%,78.5%であった.多前核形成率は3.4%,3.4%,5.8%であった.Day3良好胚率は45.9%,50.4%,54.3%であり,45歳以上で有意に高くなった.Day5/6胚盤胞発生率は61.0%,59.6%,38.1%,Day5/6良好胚盤胞発生率は31.1%,32.4%,17.5%であった.45歳以上は他区と比較し,Day5/6胚盤胞発生率および良好胚盤胞発生率が有意に低くなった.検討2)採卵時年齢40-42歳,43-44歳,45歳以上の妊娠率は23.0%,10.6%,0%であり,45歳以上は他区と比較し,有意に低くなった.採卵時年齢40-42歳,43-44歳の流産率は30.6%,33.3%であった.
【結論】
採卵時年齢が45歳以上になると,Day3まで良好に胚発育するも
のの,その後,胚盤胞へ至る割合が少なくなった.凍結融解胚移植を実施した結果,採卵時年齢が45歳以上では,当院での妊娠例はなかった.以上のことから,挙児を希望する場合,なるべく早く採卵を行い,45歳以上では培養,臨床成績について現状をよく理解した上でARTを実施しなければならない.さらに,採卵時年齢にかかわらず胚移植時には,高齢妊娠・出産のリスク,出産後のサポート体制を整えることも必要である.

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