Papers and Abstracts

論文・講演抄録

O-36 ZyMotを用いた調整後精子所見とART 治療成績 -sibling study-

学術集会 一般演題(口頭発表)

2021年度 学術集会 一般演題(口頭発表)

発表者:水田 真平1)・東山 龍一1)・岸本 匡史1)・小牟禮 志帆1)・山口 耕平1)・竹内 巧2)・松林 秀彦1)・石川 智基1)

1) リプロダクションクリニック大阪, 2) リプロダクションクリニック東京

Abstract

【目的】
精子DNA 断片化はDay3以降の胚発生に影響を与えること,また
密度勾配遠心法を用いた精子調整過程では活性酸素種の発生等により精子DNAの断片化(SDF)が進行することが知られており,SDF
を抑えることは重要である.今回,当院における従来の精子調整法
である2層密度勾配遠心法+swim up(DGCS)と,遠心処理を行うこ
となく運動精子を分離可能であるZyMot MultiTM( 850μL)スパー
ムセパレーター(ZM)によって回収した精子について,精子DNA 断
片化率(SDFR)およびART使用後の治療成績をsibling studyにて比較した.
【対象と方法】
2020年3月から5月,2020年12月から2021年3月に成熟卵が6個以
上回収できた前医ART 歴なし,当院ART 初回および2回目,精液量2.0mL 以上,運動精子濃度1×106/mL 以上であった95周期を対象とした.平均年齢は妻34.7歳±3.9歳,夫36.0歳±5.5歳であった.精液を半量に分け,DGCS は90%および45%の2層密度勾配遠心(500g,15分)し,遠心洗浄(150g,5分)後,30分間swim upを行った.ZMは30分間のメーカー標準プロトコルで行った.成熟卵を半数ずつに分け,各群の精子をIVF およびICSIに供した.SDFは原精液,DGCS,ZM 調整後をフローサイトメーターCytoFLEX(BECKMAN COULTER社)を用いて測定した.
【結果】
ICSI実施個数はDGCSが289個,ZM が293個で,培養成績はそれぞれ,2PN 率78.9 % vs 80.9 %, 胚盤胞発生率58.1 % vs60.1%,良好胚盤胞率26.5% vs 35.7%であり,良好胚盤胞率においてZM が有意に高率であった(P<0.05).IVF 実施個数はDGCSが392個,ZM が382個で,培養成績はそれぞれ,2PN 率70.2% vs66.6%,胚盤胞発生率57.8% vs 62.0%,良好胚盤胞率40.1% vs41.2%であり,いずれも有意差は認めなかった.現時点での移植周期あたりの臨床妊娠率はDGCS が59.2%,ZM が50.0%で有意差は認めなかった.SDFRは原精液が15.0±11.8%,DGCSが10.7±12.7%,ZM が3.8±5.7%であり,ZMは原精液とDGCSに比べ有意に低かった(P<0.01).原精液におけるSDFRとDGCS およびZMの培養成績には相関は認めなかった.
【考察】
ZyMot スパームセパレーターは遠心処理を必要としない作業工程
数の少ない精子調整で,DNA 損傷の少ない精子の回収率を向上さ
せることができた.また,swim upを併用した密度勾配遠心法と比
べて胚発生が改善する傾向があり,特にICSIにおいて良好胚盤胞を
高率に得ることができた.

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