Papers and Abstracts

論文・講演抄録

O-7 子宮内膜ポリープの数的評価は 慢性子宮内膜炎の予測因子となる

学術集会 一般演題(口頭発表)

2022年度 学術集会 一般演題(口頭発表)

発表者:勝又 翔子1)・髙柳 裕子1)・名古 ゆり恵1)・田島 麻記子1)・光井 潤一郎2)・大内 久美3)・林 正路3)・川井 清考1)・石川 智則4)

1) 亀田I VF クリニック幕張
2) 東京医科歯科大学大学院生 生殖機能協関学
3) 亀田総合病院生殖医療科
4) 東京医科歯科大学病院 茨城県小児・周産期地域医療学

Abstract

【目的】
子宮内膜は短期間で増殖・剥脱を繰り返す臓器であるものの,持続的な炎症を基盤とした慢性子宮内膜炎(CE)が着床を阻害することが知られている.また,子宮内膜ポリープ(EP)は大きさ・部位などにより不妊原因となることがわかっている.近年,EPとCEの関連が報告されている.CE 治療は抗菌薬治療が主流であったが,EPをふくめた子宮内病変に対しては手術療法が妊娠率改善に有効であることがわかってきた.EPに対する子宮鏡手術療法は患者にとって侵襲的介入となるため,CEを加味したEPの手術介入基準が必要である.EPの状態におけるCE 有病率を把握することを目的に,EPの数的評価とCEとの関連性を検討した.
【方法】
2014年3月から2022年5月の間に生殖医療実施2施設で子宮鏡下内膜ポリープ切除術を施行された329人の不妊女性を対象とて,2個以上の多発ポリープと単一ポリープにおける慢性子宮内膜炎の有病率に差があるかを検討した.CEスコアはCD138免疫染色を主体としたMcQueen2015分類(スコア1:軽症,スコア2:中等症,スコア3:重症)を用いた.患者背景はStudent-t 検定,慢性子宮内膜炎の有病率比較にはFisher の正確確率検定を行った.
【成績】
多発EP 群174例,単一EP 群86例を認めた.年齢が多発EP 群
36.1(±4.2SD)歳,単一EP 群36.8(±4.6SD)歳,BMIが多発EP
群22.1(±3.6SD),単一EP 群21.9(±4.1SD),妊娠回数が多発EP群0.3(±0.6)回,単一EP 群0.3(±0.6)回,出産回数が多発EP 群0.1(0.3)回,単一EP群0.(1 ±0.3)回といずれの背景因子も有意差を認めなかった.McQueen分類のスコア1以上では多発EP 群(67.2%)と単一EP 群(67.4%),スコア2以上は多発EP 群(23.0%)が単一EP 群(10.5%)であった.スコア2以上の割合は多発EP 群が単一EP群より増加した(P=0. 0178).
【結論】
EP 多発群は単一群と比較し,中等度以上のCEの有病率が高いことが明らかになった.多発EPはCE 加療の観点からも子宮鏡手術が好ましいと考えられる.一方,単一EPは現在考えられているように大きさや部位などが手術判断基準であり,CE 加療を意図した手術が必要ないかもしれない.CEを加味したEPの手術介入基準には,EPの大きさやCE 特有の子宮鏡所見(発赤・間質浮腫・マイクロポリープ)を加味した分類が必要と考える.今回の我々の検討は,CE・EPに対する適切な治療介入の一助になる可能性が示唆された.

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