Papers and Abstracts

論文・講演抄録

O-8 タイムラプス観察は分割期胚の選別に効果を発揮する

学術集会 一般演題(口頭発表)

2022年度 学術集会 一般演題(口頭発表)

発表者:堀金 聖羅1)・佐藤 学2)・森本 義晴1)

1) HORAC グランフロント大阪クリニック
2) I VF なんばクリニック

Abstract

【目的】
異常卵割により発生能が低下するという報告は多数ある.しかし異常卵割胚でも移植に有用という報告もあり,どの胚を移植するべきか見分けるのは未だ難しい.また,本年より不妊治療の保険化も始まり,タイムラプスは先進医療として保険診療との併用が認められている.今回タイムラプス観察により,正常卵割胚と異常卵割胚の移植に適した時期を比較し,改めてタイムラプス観察が有用であるか検討した.
【方法】
2020年1月〜 2021年12月に受精後3日目の分割期胚を単一移植した525周期,または受精後5,6日目の胚盤胞を単一移植した604周期を対象とした.タイムラプス観察にはCCM-iBIS(アステック)を用い30分間隔で撮影した.第一および第二卵割が正常な胚を正常卵割胚(NC 胚)とし,それ以外を異常卵割胚(AC 胚)とした.年齢を29歳以下(A 群),30- 34歳(B 群),35- 39歳(C 群),40- 42歳(D 群),43歳以上(E 群)とし,各群の妊娠率を比較した.検討1:単一分割期胚移植(SET)でのNC 胚とAC 胚の妊娠率を比較.検討2:NC 胚を用いたSETと単一胚盤胞移植(SBT)の妊娠率を比較.検討3: 2020年1月〜 2021年12月に採卵し胚盤胞まで培養した3362個の胚を分割様式ごとに胚盤胞到達率を比較した.
【成績】
検討1:A 群66. 7%(10/ 15) vs. 0. 0%(0/ 8),B 群50. 0%(24/ 48) vs.4.8%(1/21),C 群30.3%(36/119) vs. 11.4%(4/35),D 群12.4%(13/105) vs. 17.0%(8/47),E 群6.1%(5/82) vs. 4.4%(2/45) となりA,B,C群でNC胚が有意に高かった(p<0.05).D,E群では差はなかった.検討2: SETとSBTの妊娠率はそれぞれA 群66.7%(10/15) vs.67. 6%(23/ 34),B 群50. 0%(24/ 48) vs. 52. 1%(87/ 167),C 群30. 3%
(36/119) vs. 51.4%(144/280),D 群12.4%(13/105) vs.46.0%(46/100),E 群6.1%(5/82) vs. 21.7%(5/23) となりA,B 群では差はなかった.C,D,E 群ではSET が有意に低かった(p<0.05).

検討3: 胚盤胞到達率はNC 胚91.2%(1291/1416),AC 胚45.6%
(888/1946),移植可能な胚盤胞到達率はNC 胚66.8%(946/1416),AC 胚17.2%(335/1946)となりNC 胚が有意に高かった(p<0.01).
【結論】
検討1より全群でAC 胚のSET 妊娠率は極めて低く,SETの場合
はNC 胚を移植することが好ましい.一方40代ではSETによる妊娠
は難しいことが示唆された.検討2より全群でSBT が妊娠率は高く,胚盤胞移植が優先されるべきではあるものの,34歳以下ではNCのSETもSBT同等の妊娠率であった.検討3よりAC 胚はNC 胚に比べ胚盤胞到達率は低いものの,妊娠が期待できる胚になり得ることが分かった.以上より,分割期胚移植はNC 胚を用いることで妊娠が期待できるのでタイムラプス使用は特に分割期胚の選抜に有用である.また,AC 胚は分割期での移植は妊娠の期待が薄いものの,胚盤胞培養して移植胚として有用であるか見定めることができる.

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